Back
 少々手荒な 白黒(モノクロ)フィルム再生術 カビとキズ

フィルムのカビ

保管という意識が無かったせいもあり、屋外のプレハブ物置きという過酷な環境で35年間過ごしたネガフィルムは、程度差こそあれ100%霜降り状のカビの侵食に遇っていた。街の古くからの写真屋さんには「防止策はあるが生えてしまったカビは完全には取れない」と言われ、書籍やインターネット上も当たってはみたものの否定的なものが多く、半ば諦めかけていた。そこで一か八かの覚悟で試してみたのが、これから挙げる荒療治だ。

霜降り状のカビは通常、感光乳剤面とは反対側の正像面(画像を正像に見て手前)に生える。このカビはほぼ取り除く事ができるのでご安心。それとは別に感光乳剤面にスポット状に盛り上がって生えるカビは少し厄介だが、時間をかければ取り除く事はできる。但し、先にも述べた様に、自己流の手荒な方法なのと、フィルムメーカーや現像環境によって多少の "癖" があるので、結果に付いての責任は負えない。実践される方は、不用のフィルムで何度か試してみてから作業に取り掛かってほしい。見違える様になる事だけは保証する。編集部が撮影した昭和40年代の写真は、全てカビ除去処理を施したものだ。

用意するもの

作業台
: まず埃や塵を一切寄せつけない作業環境を作る必要がある。これは作業中に新たなキズが付くのを防ぐためで、十分過ぎる位気を使ってほしい。
作業台を別に用意するのは、テーブルよりも一段高い所で作業することで、塵や埃の侵入を防ぐ事ができる。Viewer は必ずしも必要ではないが、つや消し(マット)のアクリル板でも代用できる。荒めのつや消しアクリル板は、フィルムとアクリル板の間に塵が入った場合にキズが付きにくいのと、フィルムクリーナーの蒸発を促し、作業台をいつも清潔に保つメリットがある。

卓上スタンド: 蛍光灯よりも白熱球等の光源の強いものの方が作業に向いている。光源を作業台の表面で反射する位置にセットする。透過光よりも反射光の方が、カビの状態を確認しやすいからだ。Viewer の弱い光源では、カビの状態を把握するのは難しい。

ルーペ: 通常より多少倍率の高いものが良い。虫眼鏡でも十分。

フィルムクリーナー液: 間違っても水や洗剤は使わない事。感光乳剤面が溶けだして取り返しが付かなくなる。
ここで使用するフィルムクリーナーとは、フィルムスキャンや印画紙焼き付け時に、指紋等の油汚れを軽く拭き取るもので、カビ落としのためのものではない。高価なので、数百コマ以上作業する場合は、割安な業務用をお勧めする。

レンズ クリーニングペーパー: 2つの作業に使い分ける。一枚はフィルムと作業台の汚れたクリーナー液を拭き取るもの。もう一枚は最後の仕上げ用だ。仕上げ用に使用したレンズクリーニングパーパーは、順に汚れ拭き取り用に使い回しができるので、こまめに新しいものに変えたい。これも割安なボックス入りがお勧め。尚、レンズ拭き等に使用する不織布は塵や汚れが蓄積し、新たなキズの原因になるので使えない。

作業手順

フィルムを反射光にかざし、カビの生えている面を確認する。カビはフィルムの正像面だけにはえていることが多い。フィルムによってはクリーナーで軽く拭いて初めてカビのざらざらが浮き出てくるものもあった。

表面: きれいに拭いた作業台にフィルムを置き、クリーナー液を2滴垂らす。多めだが、ふんだんに使用した方が汚れの落ちが良いようだ。
指の腹全体を使って、軽く円を描くように、中心から外側に向かってまんべんなく擦っていく。クリーナー液が蒸発する前に、フィルムと作業台の汚れたクリーナー液をレンズクリーニングペーパーで完全に拭き取る。2度目以降はちょっと強めに擦る。指とフィルムの間に塵が入り込まなければキズが付くことはない。この時、フィルムがずれない様にしっかり指で固定させておかないと、アクリルとの接触面に新たなキズが付く原因になる。
馴れてくると指先の感触でカビのザラザラ感が分かるようになってくる。全体的にキュッキュッという感じになってきたら、最後にもう一度同じ作業を繰り返して終了。通常のカビなら3回位の作業で、スキャンに差し支えない程度にカビは落ちる。

裏面: 表で行なった作業を一度だけ行なう。感光乳剤面にスポット状のカビがある場合は、カビの生えている場所をスポット的に行なう。このカビは頑固なので根気よく何度も続けるしか方法はない。

仕上げ: フィルム上にスジ状に残っているクリーナーの汚れを完全に拭き取る作業だ。これを怠ると、スキャナはこの汚れまでもスキャンしてしまう。
クリーナー液を微量垂らし、仕上げ用のレンズクリーニングペーパーで、軽く円を描く様にクリーナー液が完全に蒸発するまで万遍なく拭き取る。これを両面行なって完了。

スキャン時にカビやキズが目立つのは、銀塩の乗っていない(ネガの透明な)部分なので、空等のベタで乗っている部分は、ある程度手を抜いても仕上がり上影響は少ない。

フィルムのキズ

普通のキズなら、画像処理ソフトのスタンプツール(似たパターンを周りから持ってきてキズを埋めるツール)で修正できる。

スキャン時の注意

新たにフィルムスキャナを購入しようと考えている方には、AF(オートフォーカス)付きがお勧めだ。古いフィルムはカールしている事が多く、スキャナ用のカートリッジに装着しても、このカールは取れない。AF はフィルムの表面を細分化してフォーカスするので、隅々まで鮮明な画像が得られる。
それと些細な事だが、スキャン時に「自動ゴミ除去オプション」を使用しない事。車体に書いてある形式等の小さな文字までもゴミとして処理してしまう。
当然の事ながら、スキャンした画像の画質はスキャナの値段に比例する。最近のプリントショップでは、フィルムのスキャンとデータのCD-ROM化までを一括して、フィルム一本500円位でやってくれる。プロ用の機材での快適な画像を得られるので、これも1つの選択肢と言えるだろう。

画像保存法

編集部では一番高い解像度でスキャンして、ゴミとキズの補修を施した後、画像補正は行なわずに jpg. データでCD-ROM化している。「フィルムよお役目ご苦労さん」といったところだ。
データからは、ディテールは勿論の事、形式や車検情報(撮影日が特定できない場合の目安)等、ルーペとは比較にならない程の情報が読み取れる。この元データを目的に応じ加工して使用している。

(C) 2004 www.FreightCar.jp

Back